2017年06月 - ビジネスブログ

オールウィン社会保険労務士事務所
就業規則作成 助成金申請なら
2017年06月14日 [Default]
「年俸制なら残業代は含まれているから支払う必要はない」・・・

これはダメですね。

もし残業代も含むなら、基本的には年俸に含まれる残業時間と残業代を明記しておかなければいけません。
疎かになりがちですし、そもそも雇用契約書が無ければ大問題になりますのでご注意ください。

さて、高額な年俸で契約している医師にも残業代を支払うべきかという訴訟が最高裁でありました。

高額な年俸とは・・・
実に年俸1700万円!
とても良い給料ですね・・・羨ましい・・・。

病院と医師は雇用契約書を結んでおりました。
そして、病院の規定に基づき、「午後9時以降か休日の必要不可欠な業務」に対しては別途残業代は支払われておりました。

いい条件じゃないか〜、と思ってしまいますが、この医師は違います。

「1日8時間を超えた部分から午後9時までの残業代を払え」と提訴したのです。

医師残業請求

実際の残業時間はよくわかりませんが、一応理屈は通っております。
医師という職業上、とても大変な仕事ですから一般的にも給料は高いですし、残業を毎日ではなくても9時までやることがしばしばあったり、休日労働がかなりあったというのであればなおさら言いたいことは分かります。

しかし・・・医師という職制は置いといて、こういう要求をすべて鵜呑みにしていたら経営側はたまったものではありません。
雇用契約書に不備があったのは確かです。
しかし、雇用契約をする場で9時までの残業に対しての手当は年俸に含まれているのか確認はできたはずです。
私は双方に問題があると思います。

多くの企業で年俸制を採用して、実際に残業代のことを記載しているのはどれだけあるでしょうか?
おそらく年俸にすれば必然的に残業代は含まれていると認識している経営者の方は数多くいらっしゃると思います。
そして、残業も含めて年俸〇千万円と提示する。
契約の際には労働者側も残業代が含まれているか確認しない・・・。
退職してから未払い残業請求を起こす・・・。

こんなことが毎日のようにありますし、当事務所のお客様でもお困りの経営者様がおられるのが事実です。
労働基準監督署や裁判所も労働者側に立つことがほとんどで経営者(とりわけ中小企業経営者)の目線に立つことはほとんどありません。あくまでも「法律上」「就業規則上」「規程上」に基づいて判断という実情です。

確かに労働者を保護するのは大切です。企業にとっても労働者は「人財」ですから言うまでもありません。
しかし、退職前や退職した後に「あらさがし」をして労働基準監督署や裁判に訴える人を保護するのはいかがなものでしょうか?
世間では「ブラック企業」が話題になっております。
しかし、私個人的には同時に「モンスター社員」が数多く存在することも非常に大問題だと思っております。
本当に経営者の皆様はこの数多く存在する「モンスター社員」に大変な思いをしているのです。

話が少し逸れてしまいましたが、一審の地裁、二審の高裁ともに「時間外手当は年俸に含まれていた」と判断しました。

この訴訟の判決は7月7日にあります。

私個人的には、法律や規則に則るのは当たり前で重要なことは分かりますが、訴訟等になった場合はあくまでも一般的な目線で常識的な判断をしていただきたいと強く思っております。

同時に労働者を守るのは良いことですが、こういう問題が多発している今の世の中を勘案して、国には中小企業経営者の労務管理実態もよく把握していただき、必要があれば国の政策として中小企業経営者の労務管理の指針を作成してもらえれば経営者も労務管理をやりやすいのではないでしょうか。
労使双方が納得して会社を盛り立てていくには、そういうことも必要なのではないかと考えてしまいます。

2017年06月09日 [Default]
「司法書士が710万円横領」

同じ士業としてはビックリするとともに注目してしまいます。

どのようなことだったのか?
そもそも司法書士の業務を把握しないと難しいと思います。
司法書士は簡単に何をする方たちなのかというと、
まず最初に思い浮かぶ、そして必ず依頼するのは「登記」業務です。
土地や建物の不動産登記や、会社設立の際の法人登記などがありますね。

また、今もテレビやラジオで宣伝されておりますが、ここ数年で大きな問題となった「過払い金返還請求」。
最近まで多くの司法書士さんがこちらの業務に携わっていたのではと思われます。

そして、高齢化社会が進むにつれて、今も認知症の問題が大きく取り上げられております。
認知症になった方や障害者などの財産管理や生活援助を代理で行う「成年後見人」という業務を行っている方もおります。
この「成年後見人」になるには、家庭裁判所に選任される必要があります。

成年後見人

今回の「横領」は、その「成年後見制度」の中で起きてしまいました。

起訴されたのは30代の司法書士です。
家庭裁判所の選任を受けて80台の女性の成年後見人として業務を行っていた際に、
定期預金を勝手に解約するなどの手口で約710万円を横領したとのことです。
しかも、同時期に成年後見人を務めていた男性2人からも計190万円を横領していたこともわかりました。

本人はおそらく司法書士業務はできないでしょう・・・。
長らく懸念されていた事案なので、正直申し上げて自業自得だと思います。
それよりも、同じ「成年後見人」として真面目に業務に励んでいる司法書士の皆様には大きな衝撃でしょう。
お客様も「うちの司法書士さんは大丈夫かな?」と絶対に思うに違いありません。
業界を挙げて信頼回復に努める必要が出てくるでしょう。

とはいえ、「成年後見人」業務を行っているのは実は司法書士だけではありません。
本人の親族は勿論、弁護士や税理士、社会福祉士などの方たちも行っております。
そして、最近では我々社会保険労務士も一部で行っているのです。
それだけ今現在、そして今後に向けて重要な仕事なのです。

しかし、なぜ司法書士が横領など行ったのでしょう?
司法書士と言えば、試験の難易度が高くそう簡単になることはできません。
実務を覚えるのも大変でしょうし、年収も当然高いのでは?と思うのではないでしょうか?

今回起訴された司法書士は独立開業しております。
我々社会保険労務士業界もそうですが、士業=年収が高い、というのは間違いです。
これは弁護士や税理士なども同じで、一部の事務所は相当年収が高いのは事実ですが、
小規模で業務を行っている事務所は正直申し上げて一般サラリーマンの年収に届くか届かないか、だと思います。
これが更に、開業してすぐの方は当然ほとんど顧客がおりませんので0からの出発もよくある話です。

そうです。
この司法書士も独立して間もなかったのです。
固定客がおらず、将来見通しも立っておらず、開業して事務所を設立したは良いものの、収入より家賃や生活費の方が大幅に大きく大赤字の生活が続いていたようです。
そんな状態の中で得た仕事が「成年後見人」の仕事。
大きなお金(生涯財産)を扱う大変責任のある仕事です。
しかし、目先の欲求に目がくらんでしまったのでしょう・・・。
横領したお金は、全額司法書士の母親が弁償したとのこと・・・。
悲しいですね、同じ士業として・・・。

業界としても、成年後見制度としても今後は十分な対策を取っていくことは間違いありません。
今後はこうした事件は少なくなると思っております。
いや、無くさなければいけません!
我々社会保険労務士も同じです。
目先の欲求にとらわれず、事務所の信頼、社会保険労務士の信頼を考えて業務に励まなければいけません。
改めて私個人的にも胸に刻んでおこうと思う事件でした。


2017年06月05日 [Default]
昨年、某病院勤務の研修医の女性が自殺しました。
長時間労働が原因のうつ病を発症していたとのことです。

病院の労務管理上は、女性の自己申告に基づいて1ヶ月平均約48時間と把握していました。
これが正当なら労災認定は難しい状況です。
しかし、遺族が労災認定を求め調査したところ、なんと時間外労働は4カ月連続で200時間を超過!
最も多い月では251時間だったとのことです。

研修医

尋常な数字ではありませんね。
仮に1ヶ月22日勤務とした場合に251時間というと、1日8時間勤務+残業11時間30分で19時間30分・・・。
寝ている時間もありません!!
200時間だとしても毎日9時間の残業になります。

こんな働き方をしていたら誰でも潰れるでしょう・・・。
なぜ病院側は自己申告を信じただけで、放置していたのでしょうか・・・。
さすがにこの件については、労務管理の疎かさを感じざるを得ません。

遺族は「病院による殺人」とコメントしているようです。
そして、「医師不足は何の理由にもならない」と・・・。

もっともです。
自分の身内がこんな働き方をさせられた挙句の果てに自殺したともなれば黙っていられないでしょう。

それにしても何でこんなに長時間労働になっていたのでしょうか?
当直勤務・・・救急対応・・・医師不足・・・
大変なことは重々わかりますが、通常はここまでの労働時間にはならないと思われます。
早急な現状把握と今後の対策が必要でしょう。

ただ、病院全てがこのような問題を抱えているわけではありません。
私のお客様にも病院経営のお客様が何件かいらっしゃいます。
給与計算もかねて労働時間を把握しておりますが全然問題はございません。

おそらく大病院に限られるのかな?と感じます。

他の病院も是正勧告を受けている状態のようです。
それを受けて病院側も対応しております。
〇 外来診療科の絞り込み
〇 土曜日の一部休診
〇 病院閉院後の早期帰宅促進
〇 人員増加

確かに上記のようなことを実施していけば労働時間は減りそうです。
一方で、病院を頼りにしている、いやいざとういう時に今までと違うと救急患者などは行き場を失ってしまいます。

病院の労務管理は非常に難しいのです。
政府が計画している罰則付きの時間外労働規制方針でも基本的に病院は5年間の猶予期間が与えられています。
正直、病院経営者だけで対策するのには限度があると感じざるを得ません。
病院としても無理して患者さんのために動いている部分もあると思います。

やはり、病院を始め、業界ごとに現状把握の上対策を国単位で練っていく必要があるのではないでしょうか。
単純に残業規制と叫んでいるだけでは何も改善しないでしょう・・・。


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