2018年02月 - ビジネスブログ

オールウィン社会保険労務士事務所
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2018年02月23日 [Default]
先日もブログに書きましたが、言い出しっぺの国が「同一労働同一賃金」を先延ばしするなど後手後手になっております。

しかし、国の基準をよそに裁判で少しずつ判例になる基準が出てきています。

昨年9月に日本郵便の正社員と契約社員の格差問題で東京地裁判決が示されました。
簡単に以下に示します。

違反⇒住居手当(同額までは求めない)、年末年始勤務手当(同額までは求めない)・・・
合法⇒賞与・扶養手当・早出勤務等手当・祝日給・・・

住居手当と年末年始勤務手当については、契約社員に対してのみ不支給とするのは不合理であるとの判断でした。

そしてこの度、同じ日本郵便の正社員と契約社員の格差問題に対しての大阪地裁判決が出ました。

結論としては、一部手当について「契約社員に支給がないのは不合理」として、約300万円の支払いを命じました。

不合理とした手当は以下の通りです。
@ 年末年始勤務手当
A 住居手当
B 扶養手当

あれ?増えましたね!!

@の年末年始勤務手当は東京地裁でも違反との判断でしたが同額までは求めず正社員の8割程度を求めました。
ところが今回は「同額」の支払いを命じています!

Aの住居手当も同様で「同額」の支払いを命じました!

Bの扶養手当については東京地裁判決では合理的と判断されました。
しかし今回、「親族の生活を保障するもので、職務内容の相違により支給の必要性は大きく左右されない」と判断されました!
扶養手当はあくまでも「労働者と扶養家族の生活を保障するため、基本給を補完する生活保障給」としました。

手当格差違法

こういった判例が積み重なってくることで、国が示す基準を待たずに違法と判断されることがわかってきました。

企業規模を問わず住居手当や扶養手当を採用している企業は多いと思います。
また、労働基準法ではこの2つの手当については合理的であれば割増賃金の算出基準額に入れなくて良いと定められています。

今回の判決をもとに多くの企業が手当の見直しを行わなければならなくなるかもしれません。
自社で採用している手当の性格と、非正規社員への支払いの有無などを明確にして合法的に運用していかないと、このように裁判になって遡及支払いをしなければならない可能性が出ます。

国の「同一労働同一賃金」基準を待たずに、今からでも点検して備えることが必要です!

2018年02月19日 [Default]
パートと正社員について手当に格差をつけるのは合理性があるかどうか?
まさに同一労働同一賃金に直結してくる裁判例がまた出ました。

今回は卸売市場で働くパート社員が2つの手当格差について訴えを起こしました。
4名で訴え、合計120万円の支払いを求めての裁判です。

手当格差

さて、詳しい内容を見てみましょう。
1つ目の格差は、「通勤手当」の格差に対するものです。
パート社員が訴えたのは以下の理由です。
〇 通勤手当について、パート社員だからといって正社員の半額の一律月額5千円とするのは労働契約法違反だ。
これに対して裁判所の判決は以下のような見解を述べました。
⇒ パート社員も自家用車を使って25分から40分かけて通勤するのは正社員と変わらず、通勤の実費は月額1万円を超えていた。
   「実際の通勤費用を考慮せず、一律に半額を支給する差異は不合理」である。

通勤手当については法律で支給を義務付けているわけではありません。
しかし、通勤手当を支給すると規定しているのであれば当然支給する義務が生じます。
更に従業員によって一律に差異を設定するのは不合理ということですね。

もう一つの格差は「皆勤手当」です。
パート社員が訴えたのは以下の理由です。
〇 就業規則改定によって今まで月額5千円支給されていた皆勤手当をパート社員のみ廃止して不支給としたのは違法だ。
これに対しての裁判所の判決は以下の通りです。
⇒ 「労働契約法10条に定めている不利益変更についての要件を満たさず違法」である。

皆勤手当も支給するもしないも企業の自由です。
しかし、就業規則に皆勤手当の支給を明示しているのであれば当然支給する必要があります。
更に、パート社員についても皆勤手当を支給していたものを廃止してしまった・・・。
一般に不利益変更を行う際には労使での十分な意見交換が必要となります。
パート社員にとっては毎月5千円減額となるわけですから大ごとです。
何より大切なのは、労使双方での十分な意見交換だったのではないのでしょうか。

国の同一労働同一賃金実現に向けた動きは、正直のろのろペースです。
しかし、少しずつ裁判所での判例が積み重なってきております。

昨年の9月には日本郵政の契約社員が訴えた同一労働同一賃金に関する訴訟の判決がありました。
ブログでもご紹介しましたが、「年末年始手当」や「住居手当」等で正社員と一律に差をつけるのは違法だと判断されました。
しかし、その反面「賞与」や「早出勤務手当」、「夜間特別勤務手当」、「祝日給」などについては直ちに違法とは言えないとの見解を示しました。

これからも多くの問題が報道されてくることが予想されます。
その一方で、自社の非正規社員が問題提起してくる可能性も否定できません。
情報を確実に入手し、一方で自社に不合理な差異がないかの確認をする必要があると思います。

2018年02月13日 [Default]
車やバイク等で通勤している従業員がいる会社は多いと思います。

公共交通機関の便が良い場所に会社があればあまりいないかもしれません。
しかし、駅やバス停から離れていたり、電車やバスを使うより車やバイクのほうが時間もかからないし通勤の便が良いという場所にある会社も多いと思います。
当事務所のお客様にもマイカー通勤の方を多く抱えている会社様があります。

そういった場合、まず第一に「マイカー通勤管理規程」を作成し、労使双方で車両通勤の際の注意事項を明文化しております。

労災保険では、始業前及び終業後についても通勤災害が認められます(要件はありますが)。
当然労災が認められるということは会社の責任、いわゆる「安全配慮義務」を問われる可能性があるのです。
ですから絶対にマイカー通勤の従業員がいる経営者の皆様は十分に注意しなければいけません。

先日、ある従業員が深夜勤務後にバイクで帰宅中に事故で亡くなった方について、裁判所は会社の安全配慮義務違反を認定し、遺族に対して損害賠償の支払いを命じたという報道がありました。(最終的には和解です)
遺族の訴えは損害賠償約1億円の支払いです。
会社は謝罪するとともに、和解による損害賠償支払いは約7600万円です。

バイク通勤

気を付けなければいけないと思いますよね。

しかし、今回のような帰宅中の事故死で企業に安全配慮義務があると認める事例や、多額の損害賠償支払いとなる事例は異例ではあります。
なぜ、ここまで厳格なものになったのでしょうか?

結論から申し上げますと「長時間労働+深夜労働」が起因しているからです。
事故の原因は居眠りだったそうです。
居眠りするほど過労状態なのに会社はバイクでの帰宅を止めなかったのは安全配慮義務違反だということです。

深夜労働はただでさえ生活リズムを崩しやすいのは周知のとおりです。
その深夜労働に加えて長時間労働が重なれば相当な心身への負担が考えられます。
会社は「お疲れさまでした」では済まされないということです。
公共交通機関の利用やタクシー利用の指示をしなければ安全配慮義務違反となるわけです。

当然深夜勤務をさせてはいけないわけではありません。
コンビニエンスストアの店員だって22時から翌6時ぐらいまで働いていますよね。

注意しなければいけないのは次のようなことではないでしょうか?
@ 深夜労働が長時間に及ばないように注意する
A 終業から始業までの休息時間、いわゆる勤務間インターバルをある程度設ける
B そもそもできるだけ公共交通機関利用を促す
C 労働者の表情等常日頃から異変がないか確認する

一人でもマイカー通勤の従業員がいる経営者様は注意が必要です。
今回のケースは深夜勤務の方でしたが、通常勤務でも過重労働があれば安全配慮義務違反となる可能性が高まります。
今一度自社の従業員の状況を見直してみてください。

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