ビジネスブログ

オールウィン社会保険労務士事務所
就業規則作成 助成金申請なら
2017年08月24日 [Default]
またもや病院にて長時間労働によるうつ病が原因の自殺が発生し、労災認定されたという報道がありました。

直近では研修医の方のブログを2件程記載しています。
他の病院の勤務体系にも不安を感じずにいられません。

今回自殺で亡くなった方は、当時34歳の男性職員です。
小さいお子様が2人いらっしゃるようです。
この方の職務は臨床検査技師というものです。
大変そうな仕事なのは分かります。

臨床検査技師

しかし、長時間労働になった要因はどうやら別のところにあるようなのです。

勤務していた病院が、新築移転に伴い導入される「電子システムの構築」の業務をこの男性職員に任せたのです。
ここから残業が常態化・・・。
自殺直前の半年間で時間外労働が100時間を超えた月は4回。
自殺直前の1ヶ月の時間外労働は188時間。
自殺は、勤務していた病院の屋上からの飛び降り自殺です・・・。

明らかに病院の「安全配慮義務」が全く機能していません!

まず、臨床検査技師という特殊な職務に就く方に、全く畑違いの「電子システムの構築」作業を行わせる。
これは私見ですが、おそらく臨床検査技師の業務をしながら同時並行で行っていたのだと推測されます。
病院が「電子システムの構築」作業を男性職員に指示すること自体は、まだ許されるでしょう。
しかし、ここから残業が常態化し、「過労死ライン」とされる80時間を何ヶ月も超過していても何の措置も講じなかった。
経営者としては完全に失格ですね!

いつもこうした事件を拝見して思うのですが、「真面目な人ほど損をする」という現実です。
おそらく、亡くなった男性職員の方も一生懸命真面目に不慣れな作業を行っていたのだと思います。
そして小さなお子さんもいらっしゃるのですから頑張らないと、という思いもあったと思われます。
真面目な人は、命じられれば嫌とは言えず従い、何とかしようとひたすら努力します。

対して、「不真面目な人が得をする」事例も多く見てきました。
大体こういう方は、適当に業務をこなし、無理な仕事は断り、更にダラダラ仕事をします。
しかし、この中に「金魚の糞」みたいに上司に媚びを売って昇進していく人間が多くいるのです。

結果として、真面目な人と不真面目な人を比べて、どちらが評価されるか?
これはその企業の経営者や上司の独断で決まってしまうのです。
要は、最終的には、仕事云々よりその従業員を好きか嫌いかで判断してしまうのです。
これは絶対にやめた方が良い!!

経営者の方は媚びを売ってくる従業員の方が扱いやすく、大変な仕事はまじめな人間にやらせておけばいい、と思うかもしれません。
しかし、真面目な人もいつか気づきます!
「この企業にいても自分の未来はない!」と・・・。
何が起きるか?
優秀な従業員の流出です。
この人手不足の世の中において優秀な従業員が他の企業に流れてしまうのです。
だから「人財」は大切なのです。

まだまだ、こういう昔ながらの考えをお持ちの経営者の方々がいらっしゃると思います。
ちなみに私の前職、前々職などもそういう企業でした。
不真面目な従業員たちが幅を利かせているのです。

経営者の方や部下のいらっしゃる方は自分の考えを一考してみていただきたいと思います。

また、病院での度重なる過重労働による自殺は他人ごとではありません。
病院としての労務管理をしっかりしてもらうのは当たり前として、こうしたことを目の当たりにしていると自分の周りの病院の先生たちは大丈夫か?と思ってしまいます。
何故か?
例えば、自分が病気にかかって入院し、手術を受けることになったとします。
その際、手術を担当する先生が「長時間労働でクタクタの状態」だったらどうですか?
恐ろしいですよね。
患者には先生の労働時間なんて知る由もありません。

あとは、我々社会保険労務士も積極的にかかわっていかなければいけません。
当事務所のお客様の病院はそんなに長時間労働などありませんが、他の病院も社会保険労務士と顧問契約していれば、社会保険労務士が積極的に労務管理についてアドバイスしていかなければいけません!

各病院の職員の勤務実態の把握、業務改善コンサルは喫緊の課題と感じております。

2017年08月22日 [Default]
今年の初めに大きな話題となった宅配大手の未払い残業問題。
会社は全従業員の勤務実績過去2年分を調査の上、ほぼ支払いを終えたとのことでした。
総額で数百億円という膨大な金額を支払ったのです。
私は、労働基準監督署からの是正勧告が発端とはいえ、同社の姿勢に一定の評価をしていました。
そして、今後が大事だと考えておりました。

この大手宅配会社は、労働時間短縮の取り組みを行うほか、過度な荷物請負のもとになる配送料の引上げを関係各社に打診したりと一定の改善姿勢をニュースで見ていました。

本当にやる気だな!と思った反面、度々一部の従業員は未払い残業代を実際の額より少なくしかもらえていない等の情報も入ってきておりました。

そんな中、先日この会社の男性社員が加入する社外の労働組合が、未払い残業代の適切な支給と長時間労働の是正を求める団体交渉を会社側に申し入れたのです。

まず、「社内労組」ではなく「社外労組」です。
大手企業なので社内の労働組合もあるはずなのに何故?!
男性社員は社内労組に改善を求めたが、対応が不十分で信頼できなくなったとのことです。
社内労組の構成員は会社の社員です・・・どうしても手ぬるくなってしまいがちなのです・・・。
そこで「社外労組」を頼ったのですから相当ですよね。

団体交渉

そんな男性社員の訴えはこうです。
まず、過去2年分の未払い残業代を支払う、といいながら、この男性社員は上司から圧力を受けたために、14か月分までしか請求できなかったと・・・。
そして、同様の対応を受けた社員が他にもいるということです。

やっぱりか・・・。
何せ、調査期間がとても短いと感じておりました。
そして、調査にあたるのは各支店長等任せです・・・。
いい支店長もいれば、悪い支店長もいるでしょう。
正直ここが一番の問題点だとは思っておりました。
評価と同じです。
上司によって評価基準が変わってしまうことはよくあることです。
上司の見方によって左右されてしまうのは絶対に避けなければいけません。
中立の第三者が必要なのです。

更に、この一連の報道を受け、未払い残業代支給を行っている7月中旬から1か月間の男性社員の時間外労働は、月80時間を超えているとのこと。
長時間労働の是正も進んでいないとのことです。

まだまだこうした社員たちはいると思われます。

会社としては、大々的に未払い残業代の全額支給と、今後の長時間労働改善を謳っているのですから中途半端は許されないでしょう。
しかし、正直そう簡単に長時間労働が無くせるとは私の仕事上も思えません。
色々試行錯誤して少しずつ改善されていけば良いのではと考えます。

ただ、徹底的にやるといったからには未払い残業代はしっかりと清算するべきでしょう。

2017年08月17日 [Default]
難しい訴訟が始まります。

電子部品大手会社に勤めていた正社員の方が、「休日に」バイクを運転中、衝突事故に遭い、首の骨を骨折する重傷を負いました。
その後、下半身が完全に麻痺し、上半身も思うように動かなくなり車いすを利用するようになりました。

この方の処遇をめぐる問題です。

会社には、就業規則があり、「任意規定」ではありますが休職制度を設けております。
任意規定というのは、規定してもしなくても会社の自由という意味です。

当然、会社は休職制度を採用し、社員の方に休職を命じました。
休職規定が任意規定であるため、休職期間も任意に定めることができ、会社によってさまざまなのが現実です。
そして、休職期間が終わっても、「業務提供ができない」場合は「休職期間満了」となり自然退職となるという定めが一般的です。

当然事故に遭った方は、車いすを利用するぐらいですから休職期間満了時に「業務提供ができる」とはいきません。
会社は、休職規定に則って、「復職不可」とみなし、休職期間満了とともに退職扱いとしました。

これまでの経緯をご覧になって会社の対応は間違っているのでしょうか?
おそらく、今まででしたら、いや現在も「必ずしも間違ってはいない」と思います。

ところが、事故に遭った方は、「会社が復職を認めず退職させたのは違法だ」と訴えたのです。
求める内容は、「雇用の継続」「障害への配慮」です。

何点かの問題点が考えられると思います。

一つは、休職期間満了時の「業務提供の可否」です。
当然、車いすを利用するので、今までと同じような業務提供はできません。
しかし、この方は「今まで通りの業務提供は無理だが、別の業務ならできるのだから会社は配慮するべきだ」と訴えたのです。
休職期間満了前に、この方から会社に要件を伝えております。
〇 リハビリの結果、今までより時間がかかるがパソコンは使える
〇 週の半分は在宅勤務、無理なら週1日は昼で早退
〇 自宅から会社までの新幹線と介護タクシー代で1日あたり約15,000円の支給
〇 給与は下がることはやむを得ない

これを会社が「業務提供可能」と判断するかどうかでしたが、会社は「復職不可」と判断したのです。

会社としては、今まで通りの業務提供はできなくても、それに代わる業務があるかどうかは検討したのだと思います。
しかし、この方の上記のような要件を吞んで復職させるまでの業務は無いと判断したのでしょう。
復職の基本的な要件は、「従前の職務を通常の程度行える健康状態に回復したとき」と考えられます。
ただ、会社が一方的に復職不可とするのを防ぐため「配置転換等の現実的可能性の有無を検討」が求められております。

要は、この方は「この要件を満たしてくれれば復職可能」といってはいるものの、果たして会社がそこまでの義務を負うのかどうかということです。

その点でもう一つの問題です。
それは、平成28年4月1日施行の「改正障害者雇用促進法」に該当するかどうかです。
文字通り、障害者の雇用促進のために企業に配慮を求める内容となっております。
この中に、障害者に対する「合理的配慮の提供義務」というものがあります。
簡単に申し上げると、「障害者の障害の程度に合わせた配慮を行ってください」というものです。
例えば、今回のように車いすを利用する方がいる場合は、その方に合わせて机や作業台の高さを調整してくださいという感じです。

障害者雇用

また、この法律の中で以下のような文面があります。
「事業主に対して過重な負担を及ぼすときは提供義務を負わない」

要は、合理的配慮をすることがあまりにも会社にとって負担になる場合は、この法律に従わなくてもよい、ということです。

以上のような問題点を踏まえて訴訟で争われることになります。

従業員が、個人的な休日の事故(過失)により障害になり、会社は休職制度を利用し、休職期間満了時に、一般的には復職不可の状態で、今まで通りの業務提供はできず、それ以外に配置転換することも難しく、過大?な要求を呑んでまで復職させる義務があるのか?改正障害者雇用促進法の「過重な負担」とはどの程度か?

今後の障害者雇用の一つの目安になる重要な訴訟になると思います。




このページの先頭に戻る